【国民保護#9】国民保護の課題ー連絡なし・パターン・担当者

【国民保護#9】国民保護の課題ー連絡なし・パターン・担当者


国民保護(こくみんほご)、武力攻撃やテロのときに国民や住民などの避難誘導を手助けする仕組みです。

今回は仕組みとしての国民保護の課題、いろいろと見えてきています。
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訓練やってきましたー実は10年以上しています


国民保護訓練。あまり聞きなれない言葉ですが、国民保護(こくみんほご、武力攻撃やテロなどが発生したときに住民の避難や被害の軽減をするための仕組み)を効果的に実行できるようにする訓練です。

そんな訓練やってるんです?聞いたことありませんが\(^o^)/

この国民保護の訓練は、国民保護法が平成16年(2004年)に成立・施行された翌年から訓練が始まっています。これまでに福井県での実動訓練(原子力発電所への攻撃)や各地での図上演習が行われてきました。日本の47都道府県すべてで訓練が行われました(平成27年度で)

訓練回数としては福井県(10回)、徳島県と愛媛県(8回)、富山県(6回)など、各地でそれなりの回数が行われています。

内容としては始めの頃は、科学剤を用いたテロと爆発物を用いたテロ(地下鉄サリン事件や三菱重工爆破事件など、その当時に想定された事件を反映した?)を想定した訓練が多かったようです。近年は情勢の変化に伴って生物剤や放射性物質を使ったテロ、ミサイル発射などに対応するようになってきています。

※詳しくはこちら↓

・国民保護に関する国と地方公共団体等の共同訓練 - 内閣官房 国民保護ポータルサイト http://www.kokuminhogo.go.jp/torikumi/kunren/

平成29年(2017年)3月17日には秋田県男鹿市にて弾道ミサイルを想定した訓練が行われます。実際に住民の方々が避難行動をするという訓練になっています。(いままではどちらかといえば行政機関と消防、警察、消防団などの連携確認のための訓練)

※詳しくは
・弾道ミサイルを想定した住民避難訓練を実施します - 男鹿市ホームページ http://www.city.oga.akita.jp/index.cfm/17,14733,25,html

国民保護訓練の課題


訓練そのものは行われている国民保護訓練です。とはいっても訓練をすること自体が目的でないことは明らかですね。これまでの訓練を通して見えてきた課題というものもあります。見えてきた課題とはどういうものなのでしょうか?

1 防災無線とつながらない
2 訓練のパターン化
3 担当者の問題

1 防災行政無線とつながらないー連絡の不備
多くの市町村で設置されているのが防災行政無線というもの、普段は時刻を知らせるメロディーや火災情報などが放送されるあれです。

国民保護の警報などもこの無線を通して流されることになっていて、そのために年に1回は「Jアラート一斉情報伝達訓練」としてサイレンが流されることになっています。実際に訓練として流そうとするときに放送されないという事態が発生することがあります。

・平成28年度Jアラート全国一斉情報伝達訓練において情報を伝達できなかった市区町村http://www.fdma.go.jp/html/intro/form/pdf/kokuminhogo_unyou/kokuminhogo_unyou_main/h28_dentatu_dekinai.pdf

こちらでは平成28年度のときに放送できなかった自治体が掲載されています。できなかった理由を見てみると機材の設定ミス、配線不良、機器の故障が多めです。普段はメロディでしか使っていない無線ですから、いざという時の設定は忘れてしまうのかもしれませんね(パソコンの設定も時が経つと忘れてしまいますから)

※Jアラートは警報を一斉に伝達する装置で、職員による操作なしで防災行政無線などに放送される仕組みです。そのため機材自体の設定や維持管理が重要です。

・内閣官房 国民保護ポータルサイト http://www.kokuminhogo.go.jp/shiryou/nkjalert.html

アラートの内容が書かれています。

※現在ではスマホや携帯電話にも通知できるようになっています。

2 訓練のパターン化・マンネリ化
回数を重ねてきた訓練の宿命とも言える問題です。どうしても同じ内容のことを繰り返し、その訓練自体が失敗しなければ訓練の成果にしてしまう…という問題です。訓練をすることが目的になって、訓練で失敗しないための訓練になってしまうことです。

この問題は国民保護担当でも認識しているようでブラインド訓練(訓練参加者に訓練の内容を見えないようにしておくこと、担当者の素の対応がでやすい)の必要性をずっと言っています。

国民保護の仕組み自体が法律で決められたことだけをすることですから、同じパターンしかない!というのは一面の事実ですが、国民保護が発動されるテロはその内容が大きく変わってきていると思います。

例えばフランスやドイツ、トルコで発生した単独または少人数の襲撃事件です。いままでのテロ事件というと組織化された集団が、用意周到に計画して、大規模な攻撃にでるという感じでした。(あさま山荘事件や三菱重工爆破事件、地下鉄サリン事件など)

フランスやドイツで発生したのはトラックを人混みに突入させる、劇場やライブ会場を攻撃して観客を死傷させるなど、いままでの形とは少し変わってきているように感じます。これらの攻撃は少人数でも単独でも実行はできますし、それほどの計画も必要はないような感じです、極端な話その日に決めてしまえばいいわけで、レンタカーを借りてそのまま実行ということもできそうです。

そこまで行政が対応できない!

というのも事実。国民保護は基本的には事後の対応ですから、訓練内容に入れている時間はないというのもそうかもしれません。

3 担当者の問題ー人事異動と減点主義
国民保護の担当者の問題です。国民保護などの危機管理系の担当者は数年おきに異動していって個々人としての能力・練度が向上・維持できないという問題です。市町村などの防災関連部署は基本的には交通安全教室の開催などとの兼務ですから、普段から非常事態での訓練をしているというわけではないようです。

また行政機関内部での評価基準、減点主義も大きな影響を与えます。減点主義(げんてんしゅぎ)とは、100点満点から失敗ごとに点数を引いていって評価を決めるというもので、この方式を危機管理系の仕事に当てはめると大惨事です。(住民票の発行など決まりきったことなら有効だとは思います)

大惨事?

そうです、国民保護などの危機管理系の仕事は失敗の連続です。法律で書かれていることが実際にそのままに実現されることは現実にないですし、そもそも想定外のことは法律にかかれていません。また実際に行動する人間も焦って失敗していきます。

危機管理系に慣れていない担当者が減点主義から訓練を計画して実行したらどうなるでしょうか。もしかしたら、こんな訓練になるかもしれません(訓練に失敗したら自分の評価に影響するという前提)

1 訓練内容をことこまかく書いた計画書を参加者に配布(ブラインドじゃない)
2 計画書の時間通り、動き通りに演じてくれ!
3 実働?平日の昼間でしよう、しかも晴れの日だけ

という感じです。絶対に失敗しない訓練の誕生です。訓練は本番で失敗を少なくするためにできるだけ失敗することが大切なはずです。訓練で失敗したことを検証していくことが必要なのに訓練で失敗しないわけです。

そんなときのための危機管理監!

と気づいた方はさすがです。危機管理監(ききかんりかん)とは、行政機関内部で危機管理系の仕事をまとめる人です。地震や豪雨などのニュースで見ることも多い人です。この危機管理監は消防や自衛隊などで勤めた方が就く仕事となっています。

なら大丈夫!(^^)

と思われるかもしれませんが、実は微妙な問題です。危機管理監などになった人の個人的能力という問題ではなくて、仕組みの問題です。自治体では危機管理監を知事や市町村の直属の役職にして意見をすぐに聞けるようにしていますが、一部では市民・総務部の下の防災関係部署の中に置いている場合もあるからです。

こうなると危機管理監などのアドバイスは課長・部長を通してしか行われないことになり、訓練計画自体に意見が反映されないかもしれません。非常事態は時間勝負、行政機関内の手続きと力関係に左右されることはあまりよくないと思います。

・退職自衛官雇用ガイド:退職自衛官雇用のメリット http://www.mod.go.jp/gsdf/retire/chihou/

こちらは危機管理系の仕事で都道府県や市町村に就職した自衛官の人数です。

これからの訓練は?ー型破りな訓練を


国民保護の課題でした。これまでは国民保護の訓練自体を行うこと、継続することがメインのような印象でした。「国民保護だって!軍靴の響きだ!」という空気の中ではそうせざるを得なかったのかと思います。

ただし、これからは変わらないといけないと思います。安全ほど脆いものはないからです。上記で見た課題から見ると訓練自体の目的化や担当者の問題などが見えてきていますし、現実の情勢が安直であることを許さないからです。(もちろん費用対効果は考えないといけません、青天井も無理です)

じゃどうすればいい?

と思われるかと。こと危機管理系のことは「正解」がありません。教科書みたいな答えがない中でできることは…

・個々人のすばやい避難行動や危険への直感の養成
・行政機関の連携
・訓練の形式化を防ぐ(ブラインド訓練など)

ことかと思います。これらは失敗を認める訓練の中から生まれてくるものだと思います。失敗を絶対に認めない訓練は型通りのもの(避難所への到達時間を競うタイムトライアルとか)ですから、この型破りからしてみるといいのではないでしょうか。まずは訓練での失敗を認めることから、お金もかかりませんし、実行に移すのも早いと思います。

東郷平八郎元帥は「(軍備に制限は加えられても)訓練に制限はないでしょう」と言ったそうです。危機管理風にいえば「法律に制限はあっても訓練に制限はないでしょう」です。

以上、うさぎの耳(@usaginomimi)でした!m(_ _)m

※この動画は TheJR287 さんの投稿です。


武力攻撃や大規模テロなどの時に流れるサイレンです。

※この動画は PLAYMEDIA さんの投稿です。


2つ目の音が国民保護のサイレンです。

【うさぎの耳的な今日のポイント】

  • 国民保護という仕組みがあります。

  • 平成17年(2005)から訓練が行われています。

  • 課題も見えてきています。

  • 訓練での失敗は必要な失敗です。


【関連リンク(註)】
・内閣官房 国民保護ポータルサイト http://www.kokuminhogo.go.jp/shiryou/hogo_manual.html

国民保護に関するパンフレットがあります。個々人の行動方法などもここにあります。

・国民保護:総務省消防庁
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/fieldList2_1.html

消防庁の国民保護の担当部署です。

・内閣官房 国民保護ポータルサイト
http://www.kokuminhogo.go.jp/

・武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律 抄
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/h36/h36HO112.html

国民保護法です。

・武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律施行令
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/h36/h36SE275.html


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