【軍隊≠警察 #8】自衛隊は軍隊として仕事ができるのか?


集団的自衛権など軍事をめぐる議論は一段落し、これからが本番(法律作りなど)となります。

日本の軍事は超細かい法律論に入り込んでしまいますが、今回こそは超精巧な工芸品的法律作りにならないことを望んでいます。

さて、日本の軍事議論の中心には常に自衛隊がいました。自衛隊自身が、その仕事について発言することがない中、自衛隊をどう使うか?の話が出てきます。

自衛隊をどう使うか?…つまり自衛隊にどういう仕事をさせるかの話で大切なのは自衛隊が与えられた仕事をできるのかという点です。

「知っておきたい!仕組みとしての軍隊」の8回目は、これまで紹介してきた見方で自衛隊を見てみたいと思います。

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※前回までの記事はこちらです。

#1 知っておきたい!仕組みとしての軍隊

#2 国家or政府!? 軍隊はどこに所属する?

#3 これしかできない or これ以外はしていい! 軍隊の力の使い方

#4 軍隊の3つの力

#5 ふたり以上 or ひとり-集団の軍隊・個人の警察

#6 集団の自衛が軍隊・個人の自衛の警察

#7 Internationalな軍隊 国内な警察

軍隊とは?のおさらい。

+合法的な武装組織(#1)
+国家直属で自前で人とモノを管理する自立型組織(#2)
+「これだけはしちゃダメ。でもこれ以外は自由にしていい」という力の使い方(#3)
+混乱のなかから秩序を作り出す(#3)
+組織としての力がある(#4)
+重武装からの攻撃力(#4)
+補給が自前でできる(#4)
+集団で行動する(#5)
+集団として武力を使う(#6)
+国際的な組織で国際標準な行動をする(#7)
=軍隊

軍隊とは?


 自衛隊が軍隊かどうか、軍隊として仕事ができるのか、を考えるために、まず軍隊とは何か?を見ておきたいと思います。

軍隊の定義はいろいろとあるとは思いますが、ここでは一応…

政治(家)が設定する戦争目的を達成するために、日頃から戦闘訓練をし、その訓練に基づいて戦闘を行って、戦争目的達成に必要な軍事的成果を得る組織

とします。戦争自体の目的は政治が決めるもの、軍隊はその目的達成のための手段という目的・手段の位置づけです。

軍隊 = 戦争目的 + 戦闘訓練 + 戦闘行動 + 軍事的成果 で作られた目的達成のための組織と言えます。

自衛隊は軍隊?


 結論からいうと自衛隊は軍隊です。国内法では疑いが残りますが、国際的には戦時国際法の適用を受ける交戦者団体の資格を持つ組織ですから、国際法的には間違いなく軍隊です。自衛隊という名前はどうであれ、軍隊としての地位があります。

自衛隊は軍隊、では軍隊として仕事はできるのでしょうか?ここが本題です。

自衛隊は軍隊として仕事ができるのか


いままでの連載で書いてきた見方から自衛隊の軍隊度を測定してみましょう。

  • 合法的に武装しているか ⇒ ◎

  • 国家直属の組織か? ⇒ △

  • 権限の決め方は「これだけはしちゃいけないリスト」? ⇒ ×

  • 組織力 ⇒ ◎

  • 攻撃力(重武装) ⇒ ◎

  • 補給力(長期間活動できる) ⇒ ◎

  • 集団として武力を使えるか? ⇒ △

  • 行動は国際標準でできるか? ⇒ ×


自衛隊はという結果になります。ひとつひとつを見ていきましょう。

合法的に武装しているか


 この点は問題ありません。自衛隊は警察と同じように合法的に武装しています。

国家直属の組織か?


 少し疑問符がつきます。自衛隊の組織自体が政府機関のひとつの扱いです。階級は与えられていますが国内的には行政職員のランクに準じる扱いです。実体としては「軍人」で、仕事も「軍人」であることを求められるのに、国内法での扱いは「特別職国家公務員」です。もちろん国際的には、自衛官の階級は重いものになります。

権限の決め方


 自衛隊の権限の決め方は「最大限これしかするなリスト」(ポジリスト)になっています。これは警察には妥当でも自衛隊にはよくない方式です。軍隊の仕事は想定外だらけ!ですから、最低限してはいけないことだけを決めておいて、他は軍隊が判断できるようにする必要があります。

軍隊としての仕事を要求される自衛隊には「最低限これだけはしちゃけいないリスト」(ネガリスト)が必要です。

組織力・攻撃力・補給力


 仕組みとしては問題ありません。自力で人・物資を管理できる仕組みがあります。

集団として武力を使えるか?


 自衛隊の作戦のうち「防衛出動」(戦争)は◎がつきますが、それ以外のグレーゾーン(警察・海上保安庁の仕事か自衛隊の仕事か判別しにくいもの)では×です。

軍隊の国内使用は基本的には避けるところですが、警察や海上保安庁で対応できない事態だからこそ、自衛隊を出しているはずです。それなのに法律上の武器使用が個人単位(正当防衛と緊急避難)となっています。集団として行動する強みを活かせない状態で自衛隊を出動させても意味は薄いです。

出動させても当の自衛隊が一番困ります。訓練では集団として行動し発砲するようになっているのに、実戦では個人単位で発砲してください!となりますから。

行動は国際標準でできるか?


 ×です。自衛隊の国内使用(グレーゾーンなど)でも縛りがありますが、国際社会で動くときはさらに縛りがかかります。最近の集団的自衛権の話題で議論された「駆け付け警護」などは国際標準でないといけないものですが、国内法が最優先となっていて自衛隊が軍隊として行動することが難しくなっています。

軍隊は国際的な組織で、国際法に従い、その力は外国民に向けられています。その国際性を基準に軍隊として仕事ができるようになります。自衛隊に軍隊としての仕事を求める以上は国際法仕様の組織に変える必要があります。

国際標準に!


 結論はいつも同じですが、本当に自衛隊の行動基準を国際標準に!ということです。軍事の世界では自衛権は「当然」であって、各国は自衛権+アルファのことを求められつつあります。それは「破綻国家」や「保護する責任」という言葉で表現されています。

軍事の自国性(自衛権)と国際性(集団安全保障など)の基本にあるのは、軍隊の行動の国際標準化です。

軍隊は「秩序のないところに秩序を構築する」組織、秩序のない地域は想定外の宝庫であり、同時に敵というまったく不明な存在もいます。だからこそ各国の軍隊が気にするのは「軍隊として仕事ができるのか?足手まといにならないか?」だけです。国内法基準に縛られた軍隊を受け入れるほうは不安でしかたありません。

集団的自衛権など自衛権の議論が一段落したいま、本当に自衛隊に仕事をしてもらいたいのなら、自衛隊の国際標準化(行動も名誉も補償なども)こそ必要なことだと思います。

以上、うさぎの耳(@usaginomimi)でした!m(_ _)m

【今日のポイント】

  • 自衛隊は国際法では軍隊です

  • 自衛隊にまともに仕事をしてもらいたいなら国際標準化が必要です


  • ※この動画は JGSDFchannel さんの投稿です。ありがとうございました!


    【参考になる本】
    軍隊と警察を知る唯一の本かもしれません。

    仕組みとしての戦争を解剖する本です。

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