【軍隊≠警察】ふたり以上 or ひとり-集団の軍隊・個人の警察 知っておきたい!仕組みとしての軍隊#5


自衛権のお話の前提として、知っておきたいのは軍隊の仕組みです。

自衛権はあくまでも権利、その権利を使うときの手段は軍隊です。その軍隊を知るための記事も第5回目となります。

今回は軍隊と警察の「集団と個人」についてです。この違いが命令や階級など、組織の仕組みに大きな影響を与えています。

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※前回までの記事はこちらです。

#1 知っておきたい!仕組みとしての軍隊

#2 国家or政府!? 軍隊はどこに所属する?

#3 これしかできない or これ以外はしていい! 軍隊の力の使い方

#4 軍隊の3つの力

軍隊とは?のおさらい。

 合法的な武装組織(#1)
+国家直属で自前で人とモノを管理する自立型組織(#2)
+「これはしちゃダメ。でもこれ以外は自由にしていい」という力の使い方(#3)
+混乱のなかから秩序を作り出す(#3)
+組織としての力がある(#4)
+重武装からの攻撃力(#4)
+補給が自前でできる(#4)
=軍隊


ちょっとだけ復習 - 軍隊の性格


 今回のお話は軍隊と警察での「集団と個人」についてのもの。そのお話をする前にちょっとだけ復習しておきます。それは軍隊の性格です。軍隊は混乱した地域(戦場など)で行動できるように作られた組織です。警察はその逆、秩序が安定した地域で行動できるように作られています。

警察 → 平時の秩序を前提に行動する組織 + 平時の秩序維持を担当。
軍隊 → 戦時を想定して行動する組織 + 平時の秩序が他国の軍事力等で強制崩壊した時に出動。

という具合ですね。つまり、警察は現在ある秩序を維持管理する組織、軍隊は混乱した状況で、相手により壊された(+壊されそうな)自国の秩序を再構築するために相手軍隊を排除するための組織ということです。

この軍隊の性格が、軍隊を集団として組織させる決め手となります。

集団と個人


 前述のように軍隊は混乱した地域で行動する組織、その混乱した地域には秩序はありません。秩序のない地域での行動は集団行動を促します。そこで軍隊は集団行動をとり、上から下まで一貫した命令系統が作られています。こうした命令系統がないとかえって混乱の元になり秩序の再構築ができないからです。

そして警察官。この言葉が表すように個人で行動する人です。その判断も行動もすべて警察官個人としてのもので一人で行動します。これは警察が集団化すると、平時の秩序では一般国民が警察に対抗できないからです。

軍隊と警察の集団と個人は言葉としても分かれています。具体的には…

軍隊は → 部隊(集団)として行動する。
警察は → 警察官が職務を行う。

となります。 自衛隊が動く場合、一般的には「自衛隊が行動する」となり「自衛官が行動する」とは言いません。これは部隊という集団で行動する軍隊をカンタンに表現したものです。その軍隊では具体的にはどういった掟があるのでしょうか?

命令 - 軍隊の掟1


部隊という集団の掟の第一は命令です。命令というのは…

階級が上の人が出した指示を、階級が下の人に順に伝えていき実行するという仕組み

です。この命令の仕組みは混乱した地域では力を発揮するもので、軍隊の強み(と同時に弱み)になります。命令の仕組みは3つの明確で作られています。それは…

1 命令を出す人を明確にする。
2 命令の種類を明確にする。
3 命令の文書型式を明確にする。

というもの。1はすぐ上の人だけが命令を出せるというもので、師団→連隊→大隊→中隊→小隊→分隊の順に命令が出せる人が決まっています。命令を出せる人が不在の場合には、代わりの人があらかじめ指定されているので、必要な命令が出ないということはありません。

2は、どこからの命令か・どういう内容の命令か?が明確にされていることです。この明確化は命令到達の混乱を避けるためのもの。師団が出した命令、連隊が出した命令などが混在していても一番最後に出た命令を実行すればいいだけです。また、実行を求める命令か激励の命令かなども明確にわかるので、この点でも混乱を避ける事ができます。

3は命令の文書型式が決まっていること。誰がどう読んでも同じことしか書かれていないと判断できることが理想で、命令を明確に的確に伝える為のものです。

階級 - 軍隊の掟2


 出された命令は実行する必要があります。命令を実行する仕組みが階級というもので軍隊には将官(大将とか)、佐官(大佐とか)、尉官(大尉とか)、下士官(軍曹とか)、兵士(上等兵とか)の分け方があります。これは実行を分担することと責任の範囲を明確にすることで、各階級の人たちの行動の自由を保つ仕組みでもあります。一般的に言えば有限責任の株式会社の仕組みみたいなものです。

命令と階級の対立関係


 軍隊の掟である命令と階級ですが実は対立関係があります。それは…

命令があるならば、その命令だけをすればいいじゃないか!階級なんていらないんじゃない?

という対立です。上位の階級の人が出した命令を単に実行するだけならば階級は不要なのでは?という問題です。この問題についてはプロイセンのフレデリック・ウィリアム皇太子とある少佐のやりとりがあります。
 戦争中に皇太子がある少佐を呼び止め、皇太子は「貴官はなぜ作戦に失敗したのか」と聞きます。少佐はこう答えます「私は皇太子からの命令とおりに作戦を行いました。間違っていません」(皇太子の命令が悪いと言いたい)と。その答えに皇太子は…

階級は何のために与えられているのか?いざというときに命令違反の判断ができる者に与えられているのだ。命令通り・規則通りにするだけならば将校でなく兵士で良いではないか。

と返します。なかなか刺激的な答えですが階級の意義の一面を突くもの。この対立関係は組織を活性化したりバラバラにしたりと難しいものですが、軍隊という上下関係の強い中では必要な関係だと思います。現に意見具申(いけんぐしん。意見を言うこと)は将校の務めとされています。

次回は集団と個人の違いから生まれるもの


 今回は、軍隊は集団(部隊)で動き、警察は個人の警察官で動く!という話でした。その違いから命令や階級、そして対立関係が導き出されていることも分かりました。

警察にも命令・階級もありますが、軍隊と比較すればそれほど強固なものではありません(内部の秩序や実際の力関係としてどうかはわかりませんが)。警察官は法律を主人として行動するものだからです。

対して軍隊は指揮官の下に将校、下士官、兵士がついて部隊を作り、部隊として行動します。直近上位(ちょっきんじょうい。自分の階級に近い上官)の命令に基いて行動します。

次回は、この集団と個人の違いから生まれる権限の使い方の違い、責任の取り方の違いについて書いてみます。具体的には武器の使い方、発砲を例にとります。

今日はこの辺でm(_ _)m

【今日のポイント】
◎軍隊は集団で行動する。
◎軍隊は命令と階級で成り立っている。
◎軍隊の命令と階級には対立関係がある。

※この動画は JGSDFchannel さんの投稿です。ありがとうございました!


【参考になる本】
軍隊と警察を知る唯一の本かもしれません。


仕組みとしての戦争を解剖する本です。

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