[∠(^-^)]【自衛隊】「自衛隊で根性鍛え直せ!」が期待できない理由


自衛隊というと厳しい訓練に規律、そして組織行動という一般的なイメージがあります。

そのイメージにより、中には「今の軟弱な若者を自衛隊で訓練して鍛え直せ(>o<")」という方達も一定数はいらっしゃいます。いわゆる「根性鍛え直せ」の話です。

尖閣諸島を巡る日本と中国の争いなど、ナショナルな問題が生じた時には俄然勢いを得そうな話でもありますね。

その「根性鍛え直せ」論は本当に的を得ているものなのでしょうか?

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少し前の記事ですが、こういう記事がありました。


自衛隊で職員研修検討 益田市長 「根性鍛えてもらう」
12年6月28日

 島根県益田市が職員研修に自衛隊体験入隊の取り入れを検討していることが分かった。福原慎太郎市長は「精神力を鍛え、規範意識を身に付けてもらう」としている。中国地方5県の自衛隊地方協力本部は、自治体職員の研修参加は珍しいという。

 26日夜に市内の種公民館であった市長後援会の集会で明らかにした。福原市長は「市職員はクビにならず、人事評価を受けず、毎年同じように昇給する。職員の資質を高めなければならない」と強調。「自衛隊と民間企業に若い人を全員、研修に行かせることを考えている。根性を鍛えてもらう」と述べた。

 市人事課によると、陸上自衛隊山口駐屯地(山口市)に受け入れを打診しているという。同課の花本国雄課長は「実施時期や対象者などは決まっていない」としている。

 5県の自衛隊地方協力本部によると、体験入隊は2泊3日の日程で行進訓練や持久走などがあり、企業の社員研修の利用もあるという。中国地方の自治体では本年度、岡山県矢掛町が陸上自衛隊日本原駐屯地(岡山県奈義町)で実施している。(石川昌義)

(2012年6月28日朝刊掲載)

中国新聞 ヒロシマ平和メディアセンター

・自衛隊で職員研修検討 益田市長 「根性鍛えてもらう」|ニュース|ヒロシマ平和メディアセンター
 http://www.hiroshimapeacemedia.jp/mediacenter/article.php?story=20120628113115565_ja


・ダメな人達?!


この種の話は、「若者」やその他の何らかの「ダメな人達」(評価者から見てです)を鍛え直す為に語られることが多いようです。

上記の記事では、解雇されない、人事評価を受けない、定期昇給という(市長から見て)益田市職員の資質を高めるために自衛隊や企業に研修に行かせるとしています。

では「根性鍛えてもらう」とは具体的にどういう意味なのでしょうか?


・根性鍛えてもらうとは?


福原慎太郎市長のお話によれば「精神力を鍛え、規範意識を身に付けてもらう」とあります。実際、自衛隊で体験入隊を行う企業、自治体、組織などは「精神力」を挙げることが多いです。

軍隊的に言えば「精神力」というのは、兵器類という有形の戦力と相互に作用しあって戦闘力を機能させる無形の戦力と言えます。これを具体的に列挙すれば…

◎指揮命令を積極的に受け入れる。
◎作戦遂行に邁進する。
◎目的意識を明確にする。

などとなります。こういった「精神力」は確かに古今東西、多くの組織で重要視されていましたし、今もそうだと思います。

ではこれを自衛隊の体験入隊に期待してもいいのでしょうか?


体験入隊とは?


自衛隊が行なっている体験入隊とは、2泊3日くらいの日程で、自衛隊が行なっている訓練の一部を体験してもらうものです。自衛隊側はこの体験入隊をどのように位置づけているかというと「自衛隊をより多くの国民に知ってもらうための広報」と位置づけています。ただでさえ「自衛隊って何しているの?」となりがちですから、体験入隊を通じて自衛隊の一端を知ってもらおうという試みなのです。

広報という位置づけの体験入隊ですが、そこに申し込む企業、自治体、組織は「精神力」を求めています。広報と精神力、このズレは埋まるのでしょうか?


埋まらないズレ


自衛隊の訓練は組織として行い、隊員全員が一定の目的に向かって邁進するため、連帯感や達成感は感じることができます。また、困難を乗り越えたことで個々人の達成感も同時に達成できます。

ですが、これはあくまでも連帯感や達成感に過ぎず、企業等が求める「精神力」には程遠いのではないでしょうか。

そもそも「精神力」は無形のものですから、何らかの尺度で測ることは困難ですし、仮に「精神力」を得たとしても、2泊3日の体験によるその力は今後も継続できるものなのでしょうか?


ならば徴兵制だ!?


短期間の体験入隊による「精神力」が継続的でないなら、徴兵制を敷いて2年から3年の徴兵をしよう!それで根性を鍛え直そう!!となるかもしれません。実際にそういう言説があります。

ですが、徴兵制は士気(モラール)の面で志願制に劣るという議論(義務だから仕方なく、嫌々ながらも、周りの目がなど)、兵士としての質が劣るという議論もあり、徴兵制=精神力向上とはいかないと考えます。

また、「根性鍛え直せ」という人によっても、除隊者の「精神力」の評価は様々でしょうから、徴兵制が根性を鍛え直せた!とは言い切れません。


忙しい自衛隊


実際問題として、徴兵を受け入れる自衛隊側の事情もあります。自衛隊は訓練、海外での実働任務(ゴラン高原やソマリア、ハイチ、南スーダンなど)に災害派遣など様々な任務を行なっています。また、自衛隊は一面では「役所」なので、文書作成や報告などの日々の定形業務も行い、自身の特技の仕事もしないといけません。その上、隊員は減少の一途です。

つまり、徴兵の教育に時間も人も余裕がないということです。

かつてのように存在しているだけで良かった自衛隊なら、徴兵教育への時間は取れそうですが、現在のように現実に機能する自衛隊では徴兵教育はままならないと考えます。


徴兵制や体験入隊に「精神力」を期待してはいけない


体験入隊はあくまでも「広報」の一環ですし、徴兵制は戦闘で勝つ集団を作り出すためのひとつの方策であり、精神力向上が目的ではありません。ましてや愚連隊の更生の手段でもありませんし、犯罪者の更生の仕組みでもありません。

軍事との断絶(知識や思考など)が著しい日本では、軍隊は一方では「無敵皇軍」のような善良!神聖!萬邦無比的な見方と「残虐日本軍」のような残酷!極悪!!世界に例なし的な見方というブレが大きいように感じます。

そろそろ軍事について冷静で公平な見方(軍隊はあくまでも現実世界の国家機関であること、何らかの理想実現(八紘一宇とか)のための手段ではないこと)をとる時期だと思います。

今日はこの辺でm(__)m

【今日のポイント】
◎体験入隊は広報。
◎徴兵制は戦闘集団構築のためのひとつの方策。
◎「精神力」は自分により、他人により評価は様々。

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