【戦国策×現代】領土に目がくらみ同盟崩壊。そして自滅-戦国策を読む


今日は北方領土の日です。日本が現在進行形で抱える領土問題を再確認する日ですね。人間が陸地に住む以上、限られた土地を巡って争うことは避けられません。

その昔、領土を使った外交戦がありました。




【戦国策とは?】
 古代支那大陸の戦国時代における各国の動向や説客(戦略家や外交家、弁論家)の働きを記録した書籍。前漢時代に劉向が編纂した。戦国時代には秦・趙・韓・魏・楚・燕・斉の戦国七雄、宋・東周・西周・中山などの国々がそれぞれの生き残りと天下統一を賭けて争っていた。

より詳しくはこちら(wiki) 戦国策の一覧(rakuten)

【今回の登場人物・国】
・張犠 戦国時代を代表する縦横家(弁舌や策略に優れた人で各国で要職に就任した)、秦の宰相。
・懐王 楚王。中原より南の領域を支配した大国の王。斉と同盟を結び秦を軍事的敗北に追いやる。
・恵王 秦王。戦国時代で最も強大な国の王。楚・斉同盟に軍事的に敗れる。
・陳診 説客。その時に楚に居た。


 楚・斉同盟に軍事的に敗れ領土を失った秦。秦は斉を伐つべく準備を怠りません。斉討伐にとって最大の障害は楚・斉同盟の存在です。何とか同盟を崩壊させたい恵王は宰相である張儀に策を訪ねます。そして張儀は「策はあります。私が楚に行きましょう」と言って楚に向かいます。



張儀が楚の国に到着します。

 張儀は早速、楚王・懐王の拝謁します。楚・斉同盟を壊す策はあるのでしょうか?

張儀曰く
「我が国の王は楚に仕えたがっております。臣下の礼をとりたいと常々思っているのです。
ですが…貴国が斉と同盟を結んでいるために、秦は臣下の礼を取ることができないのです。」(「同盟解消を!!」ここが目的です)

「楚が斉との同盟関係をキッパリと切って戴ければ、私が秦王より賜った600里四方の土地を差し上げましょう。」(領土という餌です)

「楚・斉同盟が無くなれば、斉は弱くなり、ますます楚は大きくなりましょう。さらに秦にも恩を売ることになります。そして領土も得られる!!一事にして3つの利得があります。」(楚の大国化に役立ちますよ!という鼻薬を嗅がせています)

張儀は、同盟崩壊策のために領土・斉・秦という餌を懐王に示しました。



懐王は大喜び\((( ̄( ̄( ̄▽ ̄) ̄) ̄)))/ヤッター!!

 懐王は大いに喜んで祝宴を設けます。「どうだ!私は兵も財も使わずに広大な土地を手に入れたのだ」と得意気です。群臣も祝いを述べています。その中で暗く浮かない顔した臣下が一人、そう陳診です。

懐王曰く
「陳診よ。どうしたのだ?私は兵も財も使わずに広大な土地を手に入れたのだよ」

陳診曰く
「私が見ますところ、土地は一切手に入らず、大きな災厄がくると思います」

(なぜ?約束したんでしょ?となりますね。陳診の論拠は以下のとおりです。)

・秦が楚に低姿勢を取ってくるのは、斉との同盟があるから。
・張儀の提案は先に同盟破棄、後に領土割譲であり、同盟破棄により弱くなった楚に領土割譲をする訳がない。
・先に領土割譲、後に同盟破棄は秦には損の策であるから、そのような提案はない。

よって、懐王は張儀に騙されている!!と言うのです。そして騙されしまえば…

・秦は弱くなった楚に高圧的に出てくる。
・斉とは敵対関係になり北からの脅威が増大する。
・秦と斉が同盟を組んで同時に攻めこんでくる。

と楚にとって最悪の事態です。しかし、懐王は諫言を入れず張儀を信用してしまいます。



どうなる?楚・斉同盟 もらえたのか?領土

 懐王は斉に使者を送り、同盟の破棄を通告。さらに使者を送って再度同盟破棄を通告します。しまいには斉王を罵る使者まで送ります。それを知った張儀は「よし楚に領土を渡そう」ではなく、秦と斉で対楚同盟を締結しました。(弱った楚など相手にすることはないのです。)

約束?を果たした懐王は秦に使者を送り「斉との同盟は破棄しましたよ。約束通り土地を渡してください」と張儀に迫ります。

張儀曰く
「楚に差し上げる土地は、そこの縦横6里だけです」(600里と言っていました)

当然、使者は反論します。600里ではないか!!と。ですが張儀は「私は臣下の分際です。どうしてそんな土地をもっていましょうか」とにべもなく追い返します。
(張儀としてはしてやったり。それにしても哀れなのは楚です。自分から強味を捨ててしまいました。)



怒る懐王、諌める陳診、結果は…

 使者から復命を受けた懐王は怒り心頭に発します。秦を伐つべく軍隊を出そうとします。そこに陳診が軍隊を出すことを止めるように諌めます。

陳診曰く
「いま秦と戦うのは得策ではありません。ここは軍を退いてください」

陳診は今後の策として…

・秦に領土を割譲すること。
・領土割譲により秦を味方につけ、両国軍で斉を攻めること。
・秦に渡した領土分を斉の領土で穴埋めすれば良いこと。

と述べます。この策をとれば、斉の脅威を排除でき、なおかつ領土も増える、そして何より楚は無傷であると。(同盟の相手が代わるだけで、楚としては損はしていませんね)

 さて、陳診の策は採用されてのでしょうか。答えは不採用、怒り心頭の懐王は軍を進めてしまいます。戦闘の結果は大敗…楚軍は秦・斉・韓連合軍に敗れました。



 土地を巡る争いは、国家間に限らず様々なレベルで行われます。人間が陸地に住む以上は限られた土地を巡っての争いは避けられません。
 領土を巡っての争いは「実効支配」の度合いに係ります。「実効支配」の手段として使われるのが軍隊(もしくは警察組織)です。北方領土も竹島も実力行使による支配が既成事実化していきました。
 こと領土問題は正邪の問題と強弱の問題が交錯します。正しさと強さが一致することが理想ですが、そうとはいかないようですね。相手よりも強味が多くないと交渉はできないと思います。

【今日のポイント】

◎何が自分の強味か知らないと交渉はできない。
◎欲を張りすぎると失敗する。(腹八分目)
◎外交は自国と外国との力関係を考慮(強味を失わないこと)して行う。
◎問題には正邪の問題、強弱の問題という両面がある。

【参考文献】

LINK
戦国策(1)(東洋文庫)東周から斉の話

戦国策 (2) (東洋文庫 ) 斉から魏の話
戦国策 (3) (東洋文庫) 魏から中山の話

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