自衛官の給料 続編 (変わる!?自衛隊の人事制度7)


自衛隊に入りたい!!と思った方にとって気になること…それは「給料」(自衛隊では俸給といいます)です。

その自衛官の給与制度が大きく変わろうとしています。自衛隊や防衛省で導入に向けた検討も始まった制度改正ですが、それは一体どういうものなのでしょうか?

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最近、公表された中期防衛力整備計画(中期防)には、自衛隊の人事に関する制度の改正も記載されています。自衛官の中途退職制度(以前、当ブログでも触れました)や給与制度の改正が盛り込まれています。給与制度の改正ですが、自衛隊と防衛省としては幹部自衛官と曹士自衛官の別建て給与を目指しています。

別建て!?
 この別建てというのは、幹部自衛官(将校)と曹士自衛官(下士官)の給与体系を別にしようというものでして、具体的には…

・将官用(現行では将・将補)、幹部自衛官用(1佐から3尉)、曹自衛官用(現行では准尉から2士)の給与体系(俸給表)を作る。
・別々にした上で、曹士自衛官の上位階級の給与を幹部クラスの給与程度に増額するなど、全体として曹士自衛官の給与を引き上げる。

というものです。そこで皆さんが思われること…「なんで曹士自衛官に手厚く給料を支給するの?」ということかと思います。その前提として、将校と下士官の役割には違いがあります。将校と下士官は「軍人」としては、同じ戦闘者ですが…

・将校は命令を出す人
・下士官は将校が出した命令を実際に行う人

と役割分担がなされています。将校は全般の状況を判断して適切な命令を出し、下士官はその命令を実現するために「あそこに橋をかける」「あの場所を占領するために○○上等兵が斥候に行け」などと、具体的な行動を起こします。 軍隊の強さの一因は下士官の優秀さにあると言われ、優秀な下士官の確保は各国軍にとって重要課題です。その点は自衛隊も同じで、昨今の任務の増大や小規模部隊での作戦行動の増加によって、優秀な下士官を必要としているのです。



どうやって優秀な下士官を確保するの?
 多くの優秀な下士官を確保するという問題。そこで自衛隊や防衛省は考えました。「曹クラスの自衛官の給与を優遇すればいい!」「自衛官俸給を幹部と別にして、幹部以上の金銭的優遇を与えよう!!」という答えでした。

現行の給与体系では、ベテランの曹クラスの自衛官は、階級が上がると給与が頭打ちになってしまい、幹部自衛官にならない限りは給与が上がりません。実行役である曹クラスの自衛官を金銭面で優遇しようにもできないわけです。金銭面で優遇しようとすれば、曹クラスの自衛官を幹部自衛官にしなければならず、実行役を増やしたいという思惑は外れ、判断役ばかりになってしまいます。まさに本末転倒の結果です。

なんで優遇できないの?
それは現行の給与体系制度にあります。防衛省の報告書でも指摘されているとおり、現行の自衛官の給与体系(自衛官俸給表)は一般行政職と公安職(警察官や海上保安官など)の給与体系を無理矢理に適用している

のです。具体的には…

・将官(現行は将と将補)は「行政職俸給表」(行政の指定職)を適用
・将補階級の一部隊員と1等○佐は「行政職俸給表」(行政職)を適用
・2等○佐から2等○士は「公安職俸給表」(海上保安官など)を適用

となっています。特に2等○尉から2等○曹までの6つの階級は、給与体系上では2つの基準に入っています。(公安職(1)4級・3級の内に6階級が入っている)

いまの給与体系では、下士官に幹部並・以上の給与は支給できません。(給与基準内に収めないといけない)また、階級間の給与差がほとんど無く「幹部になってもね…」とか「頑張っても給料上がらないし…」と働く意欲や出世したいという気持ちを無くす一因となっています。ちなみに自衛官の給与体系が行政機関の給与体系に合わせられているのは「戦争はない」との前提からです。

※その他の問題点
・幹部自衛官と曹士自衛官の役割が異なるのに給与面では差がない。
・将補と1等○佐は、階級上はそれぞれ一つなのに、給与面では将補(1)・将補(2)・1等○佐(1,2,3)と「階級内階級」が生じている。

外国では?
外国では、軍人の給与体系は行政職員とは別建てにされています。なぜなら、軍人は政府の命により、戦地等の危険地域に派遣され、体を張って作戦を遂行するからです。結果として自身の死傷も想定されているのですから、せめて平穏な時は金銭的に優遇しよう!という考えからです。 前述のとおり、日本では「戦争はない」との前提ですから、自衛官の給与も「似たようなことをしている行政職員と一緒でいいでしょ!!」となります。

具体的にはどうする?
自衛隊や防衛省としては…

・幹部自衛官と曹士自衛官の給与体系(俸給表)を別建てにする(前述)
・階級間の給与格差を設ける
・曹士自衛官の最高階級として「上級曹長」を創設(准尉は廃止)して、上級曹長には
 上位階級を上回る給与を支給する(下士官優遇策です)
・上級曹長にはさらに特例的な給与を支給する(これも優遇策です)
・将補と1等○佐の給与面での「階級内階級」の解消(前述)

を挙げています。


以上が自衛隊の給与体系の改正でした。結局は「軍人」としての役割を求められる自衛官に行政職員用の給与体系を適用することから問題が生じているわけです。本来ならば諸外国のように自衛隊専用の給与体系を創設するのが本筋でしょう。ただ、別建てはその第一歩になる可能性がありますから、より善い給与制度を構築してもらいたいですね。

なお、幹部自衛官と曹士自衛官の別建て給与、上級曹長創設は既に導入に向けて検討が始まっています。格差給与と「階級内階級」の解消は解決の方向です。

「軍事とお金」の話になると、「金目当てで自衛隊に入ったのか!!国防はそんなもんじゃないヽ(`Д´)ノプンプン」、「所詮はそんなもんじゃない。だって公務員だし~~y(´0`*)(*´◇)y-~~~」と怒りと諦めがないまぜになることが多いです。 自衛官も人の子、生活するにはお金は必要です。イザとなれば命を賭けて国家防衛のために戦うと宣誓して入隊している方達ですので安心してもいいのではないでしょうか?優遇策と同時に戦時規律の制定も必要かとは思いますが。

それにしても、自衛隊を巡る問題では「日本では戦争はない」「自衛隊は軍隊ではない」という幻想が問題の原因になりますね。

【今日のポイント】
◎給与の別建て制度は下士官優遇策の面がある。
◎現行の自衛官の給与体系は行政職員用のもの。
◎自衛隊専用の給与体系創設が求められる。


・「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱について」及び「中期防衛力整備計画(平成23年度~平成27年度)について」(防衛省)
http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/2011/index.html

・中期防衛力整備計画(平成23年度~平成27年度)について(防衛省)
http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/2011/chuuki.html

・中期防衛力整備計画(平成23年度~平成27年度)について(pdf)(防衛省)
http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/2011/chuuki.pdf

・23~27年度中期防 潜水艦など増勢 前期並みの経費を確保(朝雲ニュース)
http://www.asagumo-news.com/news.html

・防衛力の人的側面についての抜本的改革報告書(防衛省)
http://www.mod.go.jp/j/approach/others/jinji/report2_5.pdf

・変わる!? 自衛隊の人事制度3 自衛官若年化のための中途退職制度(当ブログ)
http://koukuujieikan.seesaa.net/article/134031318.html

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