昨日は、変わる自衛隊の人事制度として「非自衛官化」を取り上げました。
今回は定年に関するお話。勤務延長や再任用制度についてです。
「非自衛官化」は入り口、勤務延長などは出口の話となります。
現在、陸海空自衛隊では「若年定年制」という制度を採用しています。将官クラスで60台、将校・下士官クラスで53歳から56歳で定年退職することになります。一般的な60歳定年よりも数年は約退職する制度となっているのです。
この制度が採られている理由は
自衛隊の精強性
にあります。「精強性」というと難しいですが、自衛隊は24時間態勢で仕事をしなければならず、身体的にも精神的にも強い人が欲しいということです。一般的には年齢を重ねるごとに気力と体力が落ちてくるため、高年齢隊員を早めに定年退職させることで若い隊員を採用したいのです。
一方で軍事技術の革新や軍隊や戦闘のあり方の変化を伴う軍事革命によって、軍人の内容が変わりつつあります。
それは、実際に戦闘を行う実戦職種の軍人の減少と各種軍事システムの運用・維持管理・補修などを行う後方要員の増加です。軍事システムの高度化・複雑化・専門家によって専門技術者の需要が高まっています。そのため、長年、自衛隊でシステムなどを勉強し仕事に精通した隊員を50歳代で手放すのは組織の損失だといわれています。
そこで、自衛隊が人事政策として打ち出したのが勤務延長制度・再任用制度の改正です。
「勤務延長制度」とは、自衛隊が必要とする隊員を一定期間内、定年退職させずに勤務させ続けるという制度です。従来は防衛出動時(日本戦時)の延長だけでしたが、今後はその隊員の同意を得て通算3年まで勤務させることができるようになります。
【従来の制度】
自衛隊の防衛出動時に本人の同意が無くても6ヶ月から1年以内は勤務させる(自衛隊の作戦行動に支障をきたさないため。イザとなったら辞めます!ということを防ぐ意味もあると思います。)
【今後の制度】
・防衛出動時の勤務延長制度はそのまま
・上記に加えて、通算3年間は勤務を続けさせることができる(最初の1年は防衛出動のため同意無し、残り2年間は本人の同意必要)
次は「再任用制度」です。この制度は、自衛隊を定年退職した隊員を定年後も再雇用しようという制度です。軍事システムに精通した隊員を雇うこと自衛隊の戦力を保つことや一般的な定年よりも早く定年を迎える自衛官の生活設計の手助けをする目的で作られています。従来は1年ごとの契約更新でしたが、今後は3年以内の雇用期間となります。
【従来の制度】
1年間だけ雇用。その後はその都度契約更新する。
【今後の制度】
雇用期間を3年以内に延長。長く働けるようになる。
これらの制度は、自衛隊の人材不足と軍人の仕事内容の変化に起因するものです。
確かに、自衛隊で培われた経験や知識、技術を退職させることで失わせることは勿体無いこと、退職される隊員の方たちも、得た技術を自衛隊で使えるなら嬉しいと思います。
軍事システムの高度化・専門化などは軍人の人材確保の間口を広げる可能性を有しています。情報通信などの分野の職種では、それほど体力を要求されないことからその分野の専門家を自衛隊で直接雇用することもありでしょう。現に自衛隊は技術分野(通信や語学、気象など)で技術海曹・技術空曹として直接雇用を始めています。※海上自衛隊はだいぶ前から採用、航空自衛隊は去年から。
とにかく人がいないと成り立ちません。人の育成が何より大切ということ肝に銘じて一歩一歩進めていくしかないですね。
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