事業仕分け対象となった自衛隊の人事政策 その中味


巷で話題の事業仕分け。

自衛隊や防衛省が行う事業もその対象になっています。

今回は対象事業から、自衛隊の人事に関することに注目してみたいと思います。



今回の事業仕分けの対象となっている自衛隊・防衛省の施策は

・自衛隊の広報事業(自衛隊の役割などを広く国民に知ってもらう)
・自衛官の実員増要求
・装備品の調達(22年度新規後年度負担)(ツケ払い)
・ 銃器類・弾薬のコスト削減
・情報システム借料、開発・改修経費のコスト削減
・自衛官の若年齢化による人件費の効率化
・退職予定自衛官就職援護業務費補助金
・自衛隊の募集事業
・国際平和協力センター(ある党が強く進めていた事業)
・備品のコスト削減
・装備品の選定段階でのコスト抑制
・被服のコスト削減
・基地周辺対策(特定防衛施設周辺整備調整交付金・民生安定一般助成・住宅防音)(基地周辺住宅の防音工事や関連自治体の施設建設費など)
・防衛施設の用地借料の水準(米軍や自衛隊が使用する土地の使用料など)
・駐留軍等労働者の給与水準(基地従業員の給料。思いやり予算の7割は給料などの支払いになっている)

となっています。大まかに分けると

・兵器調達や隊員の被服(制服など)などに関わる経費節減に関すること
・「国際平和協力センター」建設に関すること
・基地周辺住民への金銭的補償などに関すること
・在日米軍基地従業員の給料など在日米軍に関すること
・自衛官の実員増加や広報・隊員募集に関すること

が対象として挙げられています。

このうちの自衛官の実員増加や隊員募集に関する事業は

・自衛官の実員増要求
・自衛隊の募集事業
・退職予定自衛官就職援護業務費補助金
・自衛官の若年齢化による人件費の効率化
(今回は触れません)

があります。

自衛隊一般曹候補生採用試験(2011年度版)

ではこの事業は具体的にはどういう内容なのでしょうか。

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  Ⅵ‐1 人的な即応能力の向上

テロ、大規模災害など発生の予測が困難な各種の事態に即応するとともに、地域社会との連携強化を図るため、所要の自衛官定数を確保するとともに、充足を向上させ、人的な即応能力を強化する。

◇自衛官の充足率向上

○自衛官の実員増
・作戦部隊等での実員の不足を解消し各種事態に即応できる態勢を構築するため、自衛官の充足率を向上
・効率的な業務遂行のため、総人件費改革の各種施策(民間委託等)は継続して実施
 
○護衛艦の早期除籍
・除籍時期が近く、代替更新されていない護衛艦(4隻)について、早期に除籍させ、その乗員を他の艦に充てることにより護衛艦部隊の乗員不足を緩和


◇自衛官定数の確保

  ○特殊部隊による攻撃や大規模災害などの各種事態に実効的に対応しつつ、国際平和協力活動などを常続的に実施するため、適切な規模の自衛官定数を確保
  〔陸上自衛官定数〕
  ・編成定数=約160100人('21末)→約160100人('22末)
  ・常備自衛官定数=約151600人→約152000人
  ・即応予備自衛官員数=約8500人→約8100人
*************************************
※防衛省の平成22年度概算要求から

まずは実員増要求です。

実員というのは実際に自衛隊に居る隊員のことです。その実員数を測る数字として充足率というものがあります。

実際の隊員数が予算上の定数のどれくらいの割合なのか?というのが「充足率」です。陸海空自衛隊の実際の隊員数は予算上の定員を常に下回る状況でして、航空自衛隊と海上自衛隊が90%台、陸上自衛隊は80%台後半となっています。つまり慢性的に人手不足ということです。

実際に居る人を増やしたいが、予算は増えないとなれば、

・今まで予算を使っていたところを削って隊員採用に予算を使う
・予算上の定数を付け替えて予算を重要な方に回す

ことになります。それが

・効率的な業務遂行のため、総人件費改革の各種施策(民間委託等)は継続して実施
 常備役(職業軍人)の自衛官でなくてもできる仕事は民間委託する(例えば福利厚生事業など)。それによって現場部隊の充足率をあげる
 
・除籍時期が近く、代替更新されていない護衛艦(4隻)について、早期に除籍させ、その乗員を他の艦に充てることにより護衛艦部隊の乗員不足を緩和
 船を減らして、その船の乗組員を他の船に乗せることで乗組員不足を緩和する。


・常備自衛官定数=約151600人→約152000人(+400人。予算定員の付け替え)
 即応予備自衛官員数=約8500人→約8100人(-400人)

という事業になります。

よくわかる!自衛官試験のための論作文術(〔2011年版〕)



人を増やすためにもう一つ必要なのは隊員募集や広報の仕事です。定員を付け替えたとしても入隊者が増えないと意味がありません。

自衛隊員の募集業務は、現在各都道府県にある自衛隊地方協力本部が行っています。ここに常備役自衛官を配置し、大学や高校など(ハイスクールリクルーターと言われています)を回らせて入隊試験を受ける人を探しています。

自衛隊法などの改正によって、募集事務を担当する者を常備役自衛官に限る必要がないとされています。つまり、予備役自衛官を使ってもいいとされました。

常備役自衛官を部隊に戻すことによって部隊の充足率があがります。

広報というのは、自衛官募集広告やポスターなどを使って自衛隊入隊者を増やしたり、自衛隊の活動内容を知ってもらうために行われます。



自衛隊2等陸・海・空士採用試験(2011年度版)



最後に「退職予定自衛官就職援護業務費補助金」のこと。

おそらく、財団法人自衛隊援護協会の業務などへの補助金を指しているのかと。この財団法人は退職する自衛官の就職斡旋や資格取得などを手助けする団体です。

自衛官は一般的に「つぶしの効かない」職業とされていること、首都圏以外の地域に駐屯地や基地が多いことなどから、就職先も限定されます。

将来に不安を抱えて仕事に励むことはできないだろう、ということで退職後の手伝いをしています。

←定年後のライフプラン



これらの業務はいわば「自衛官の誕生から退職まで」を扱う仕事です。

事業仕分けにより

・そもそも必要かどうか(不要なら廃止)
・必要なら誰がその仕事をするべきなのか
・「民間」「国」「都道府県」「市町村」のうち誰が仕事をするのか

を決めることになります。


実員増はぜひ実現すべきことだと思います。周辺諸国は増員を進めています。相手国よりも強くないと軍事力の効果半減です。

募集業務や退職後支援は再考の余地があるかと。必要不要といえば「必要」、ただその手段としては「民間」でもいいのでは?と思います。

募集業務をどういう方法にしても採用試験自体は自衛隊が行うのですから、ここで選別すればいいのです。また、退職後支援も既に一部では委託されている分野ですから問題ないと思います。

今回の事業仕分けが、自衛隊の人事政策を考えてみる機会になればいいと思います。多く受験させて良質の隊員を集めないといけません。


事業仕分けとは?
http://www.kosonippon.org/shiwake/about/index.php

事業仕分け対象一覧(6)完

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091109/stt0911092115013-n2.htm

22年度防衛費 業務計画の主要事項 詳報

http://www.asagumo-news.com/news.html


「思いやり予算」(在日米軍駐留経費負担)とは何? その1
http://koukuujieikan.seesaa.net/article/126546577.html?1258008255

「思いやり予算」(在日米軍駐留経費負担)とは? その2
http://koukuujieikan.seesaa.net/article/126619529.html?1258008369

「思いやり予算」(在日米軍駐留経費負担)とは? その3 前編
http://koukuujieikan.seesaa.net/article/126723687.html?1258008460

「思いやり予算」(在日米軍駐留経費負担)とは? その3 後編
http://koukuujieikan.seesaa.net/article/126960355.html?1258008536

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